京都・炭屋旅館の鯖寿司である。
なんとも美しいその姿。
それだけで、垂涎の一品だ。
麩屋町のある、炭屋旅館。
俵屋、柊屋とならんで、京都を代表する旅館だ。
もちろん、部屋の佇まい、女将の心使い、文句はない。
年齢が上がると、和服でおもてなしの心は
旅で欠かせない重要な決め手になる。
京間畳は、江戸に比べてタテ16センチ、幅8センチほど大きい。
それが、部屋に入ったとたん、からだが広がる感覚を起こさせる。
加えて、聚楽壁のざらっとしたプリミティブな質が
心を昔に戻す。
あー、緩やかなり。ふー、澄み切るかな。
旅館の楽しみは、何よりも食事。
懐石、家庭料理を基本にした、炭屋の料理は見た目にも
胃袋的にも優しい。
出てくるペースは、ゆったりのんびり。
オヤジのペースに合わせている。
ゆうに、2時間をかけての食事だ。
こうなると、じっくり腰をすえて、その後のぶらりも忘れてしまう。
食の極めつけは、鯖寿司。
いろいろと京都では食したが、まず、目がやられたり。
鯖が盛り付けているというより、活けてある。
期待が期待を呼んで、笹をそろりと開ける。
そこには、涼やかな鯖の端麗な姿があった。
まず、端を口元へ。
酢が意外に抑えてあって、鯖の上品な香り。
我慢しきれず、すべてを口の中へ。
鯖と米が静かに溶けていく。
おー、快楽。脳みそがひゅーひゅー。
いや、恐れ入れました。
見事な視覚味覚の体験でありました。

